2020年4月28日
私が大学を出た後、ファッションの道に進んだ理由、そしてオーダーメイドを志す理由
初めてお会いした人によく聞かれるのが、大学を出た後、ファッションの道へ進もうと思った理由。
人から見れば、不可解かもしれません。
ちょっと硬い話になりますが。。。
大学時代に、哲学と社会学に興味を持っており、商学部だったこともあり、「流行と消費行動」を勉強しておりました。
消費社会の中で、人々が自分の好きな物を買うのに、どうして流行という同じ方向に紡がれていくのだろうか。
そこにどんな力が働いているのだろうか。人間にとって自由意志とは何だろうか?そんなことに興味を持つようになりました。
大学院に進んで社会学や哲学の研究をするか、フィールドワークで流行を考察するかを考え後者を選びました。
流行現象をまじかで観察するならファッション業界が一番だろうと思い、どうせファッション業界に入るならデザイナーがカッコイイしモテるかなというミーハーな考えで、新宿にある文化服装学院に進学しました。
入学当初は全くの落ちこぼれでしたが、実際に服が作れるようになると、服作りが楽しくなり天職と思えるようになりました。
3年生の冬に、仏のオートクチュールプレタポルテ連合協会主催の国際コンクールで奨励賞をいただき、そのご縁でハナエモリのデザイナーになることが出来ました。
若い頃は、コム・デ・ギャルソンとか、アントワープのデザイナーとか、前衛的でクリエイティブなデザイナーが好きでしたが、モードにおける人間の自由意志を突き詰めていくうちに、流行にとらわれない、一人一人のための洋服を志すようになりました。
洋服は、「ドレスコード」と呼ばれるように、どの階層の人がどんな服を着るか、TPOに合わせてどんな服装をするかというような社会的記号の役割を持っています。
一方、近代以降の民主主義社会では、原則的に階級は存在せず、人間は自由で平等であるとされています。だからこそ、自分で自分の好きな服を選ぶということは、自分の存在や生き方を自分で選ぶことと同義だと私は考えます。
私がオーダーメイドにこだわるのも、自分の在り方を自分で選択することに価値があると思うからです。
そして、自分で選ぶことに、モードにおける自由意志を見出したいと考えています。
自分で選ぶことは、時にはつらいこともあると思います。他人に選択を委ねた方が楽な時もあります。自由は決して楽しいことばかりではありません。
私は、洋服の専門家として、ビスポークドレスを通じて、皆さんが自分自身で服を選ぶことのお手伝いをさせていただければと思います。