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2020年6月1日

ウエストと女性らしさ

19世紀のコルセット 19世紀クリノリンスタイル 風と共に去りぬのヴィヴィアン・リー ポールポワレのコルセットのないドレス シャネルスーツ クリクリスチャン・ディオールのニュールック

洋服のシルエットで女性らしさを表すものの一つに、ウエストのくびれがあります。西洋服装史では、ウエストのくびれはいろいろな変遷を経て現代に至ります。
そして世界服装史において、女性のウエストのくびれを強調するスタイルは、中世以降のヨーロッパ地域特有のものといえるかもしれません。

1つ目の画像がウエストを細く締め上げる「コルセット」と呼ばれるものです。これは中世ヨーロッパで生まれ、17世紀以降から20世紀前半ごろまで、ヨーロッパの上流階級と中流階級の女性の間に広まりました。

2つめの画像は19世紀に流行ったクリノリンスタイルと呼ばれるフォルムです。近世のヨーロッパの女性服では、細身の上半身とボリュームのある下半身というドレススタイルが定着しました。

3つめの画像は、風と共に去りぬでスカーレット・オハラを演じたヴィヴィアン・リーですが、コルセットで絞った19インチ(49㎝)のウエストを誇っていました。
ちなみに、JIS規格の定める9号サイズの標準体型の女性のウエストは62㎝で、日本の成人女性人口の約25%がこれにあたりますが、ウエスト49㎝がいかに細く締め上げているかがわかるかと思います。中にはコルセットで健康被害が出た女性もいると言われており、現代の女性用ヒールと同じかもしれません。

その後、4つ目の画像ですが、19世紀末から20世紀初頭にポール・ポワレがコルセットのないドレスを提案しました。

続いて第1次世界大戦と第2次世界大戦の戦間期に、女性の社会進出が進みました。ココ・シャネルは女性用のシックでカジュアルで装飾を抑えた、いわゆるシャネルスーツと呼ばれるスタイルを提案し、コルセットは女性のファッションから消えていきました。

戦後、クリスチャン・ディオールがニュールックを発表し、懐古趣味ともいえるウエストを絞った「従来の女性らしいシルエット」を新しい形で復権させました。
「ニュールック」といいつつ、完全な「ニュー」ではないのですが、ファッションの世界ではしばしば「新しさ」とは、線形的な時間軸での「新しさ」を表すのではなく、現在との差異を「新しさ」と呼ぶことがあるように思います。(※この話はまた別の機会に書きたいと思います。)

現代では、「女性らしさ」は多様化し、コルセットはウエディングドレスのような晴れの日に着る特別な服装として残り、シャネルのようなウエストを絞らないスタイルも、ディオールのようなウエストを絞ったフォルムも定着し、服装史の中で偉大な先人たちが残した素晴らしいレガシーの中から、自分の好きなファッションを選ぶことが出来る幸せな時代になったと思います。

ビスポークドレスでは、「女性だからこうあるべき」ということはありません。自分で自分のスタイルを選んで、素敵な服を楽しむことができる、そんな服作りを目指したいと思います。

※ブログの内容に関して、ご意見または服装史の事実誤認等ございましたら、ご指摘いただければ幸いです。

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